<こだわりの強いあの子…どう対応する?>まずは「こだわること」を受け入れることが大切
こだわりをなくそうとするのではなく、日常生活に困らない程度に減らすことを目指したい。
島根県公立小学校教諭 川神 幸
「とにかく、こだわりが強くて、何度でもやり直しをしたがります」転入してきた二年生の春、在籍していた学校からはそんな引き継ぎを受けた。
そして出会い。「そんなに何度も消さなくてもきれいに書けているよ」その言葉も、彼には受け入れられない。自分が納得するまで何度もノートを書き直す。「もう、きれいにしまえているよ」聞こえているのかいないのか、靴箱の前で、納得がいくまで下靴をそろえ直す。なかなかトイレから戻らないので心配して見にいくと、散らばったトイレスリッパを一人で丁寧にそろえ直していたこともあった。
こだわる彼の様子を見ていて一番に感じたのは、「こだわりを止められないのだな」ということであった。
何度も下靴をそろえ直す彼に、「気になるんだね」と声をかけた。
そして、彼が納得するまでその場に一緒にいて、終わると「よかったね」と声をかけた。
そんな風に、はじめは、彼のこだわりに付き合うように心がけた。
すると、彼なりのルールが見えてきた。そして、何より彼が愛おしく思えた。
その後、時期を見て「時間は無限ではない」ことを継続的に伝えるようにした。
1ヶ月もすると、少しずつではあるが、自分で時間や回数を決められるようになっていった。そうなると、指導にも見通しが立つ。自分で決めさせ、「できたら褒める」を繰り返した。
トラブルの多い子への対応にも似ているが、指導を続けて成果が出ても、意外にそれを取り上げて褒めることがない。
でも、本当は赤飯を炊いて祝うほど、すごいことのはずだ。
「そういえば、この頃ノートに書くのが速くなったよね」などの声かけで、こだわりが減ったことを自覚させることも大切だ。「どうしてだと思う?」と問いかけて、こだわりが減ったことを本人に言わせるのもよい。
【特徴】
・小学二年生男子
・広汎性発達障害
・構音障害あり
・漢字の習得が難しく、定着しない。
・文字を書く際にはお手本そっくりにこだわり、何度も書き直す。
・準備や片付けなど、何をするにも時間がかかる。
・失敗を恐れがちで、新しいことへの抵抗感が強い。
NG 対応 こだわりをやめさせようとする
「もう、それぐらいにしときなさい」「それ以上やっても変わらないよ」「さっきやったばっかりでしょ」教師側の感覚と本人のそれとは違う。それを教師側の感覚で無理にやめさせようとしたり、こだわることを叱責したりしても本人はもちろん、教師も苦しいだけだ。言うことを聞かない本人を目の前にして意地になると、関係も築けないどころか嫌われてしまう。
効果のあった対応1 こだわりを受け入れる
こだわりたくてこだわっているわけではない。気になって仕方ないのだ。
「不安」「心配」な気持ちをまずは受け止めて、気長につきあう覚悟を決める。そして、「そうか、気になるんだね」と明るく受け止めるようにしたい。
効果のあった対応2 こだわる程度を決めさせる
教師が「あと○回」とか「あと5分」とか決めてしまうと不満が残る。
そして、いつも誰かに決めてもらわないとできない状態になることも考えられる。自分で自分の行動をコントロールできるようにすることが大切である。
効果のあった対応3 こだわりが減ったことを伝える
こだわりが減った頃を見計らって、そのことを本人に伝え、成長を一緒に喜ぶことも大切である。人にもよるが、本人もこだわる行動を減らしたいと思っている場合は特に心がける。
※この記事は2015年10月1日発行の『TOSS特別支援教育 創刊号』に掲載されたものの再掲です。
一部、名称等が当時のものになっていることがありますこと、あらかじめご承知おきください。
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