<乱暴な行いをするあの子…どう対応する?>原因を見つけて、予防していくことが大切
乱暴は、子供のサイン。よく観察して原因を減らしていこう。ほんの少しの成長をほめよう。
茨城県公立小学校教諭 兼田 麻子
二年生男子。少しでも分からないこと、できないことがあると暴れる子がいた。大声をあげて泣き、机や壁をドンドンとたたいたり蹴ったりした。
物を投げたり、教室を走りまわり本棚の上に登って大声をあげたりすることもあった。算数の授業中、よくこのような状態になった。彼の大きな泣き声で、授業が中断した。
彼は、友達とトラブルになったとき、うまく謝れない。自分が悪かったと分かると急に泣き出し、怒り出した。
なぜ、彼はこんなに大騒ぎするのか。彼の行動を観察して分析した。すると、次のようなことが分かった。
1 できないことに敏感
算数などで少しでも「難しそう」「できない」と思うと、「僕は何にもできないんだ」と自分を全て否定してしまうようだった。
自己肯定感がとても低かった。
2 本当は完璧にやりたい
図工で絵を描いても、自分の理想の絵と少しでも違うと、何度も何度もやり直した。そして「できない!」と暴れた。
教師や友達が彼の絵を「上手だね」とほめても全く聞き入れなかった。
彼は本当は完璧にやりたいのだった。
3 自分が悪かったと受け入れられない
友達とトラブルになったとき、自分が悪かったと分かるとパニックになる。「自分がいけないことをした」ことを受け入れられないようだった。
原因が分かったら、それを取り除いていくように対応した。
まず、家で、算数の予習をしてもらった。
すると「僕知ってるもん!」と余裕をもって授業を受けられるようになった。
次に、25%ルールでほめるようにした。すごく雑に字を書いていても、その中に1文字でも一生懸命に書いた字があったらその文字に花丸を付けた。すると、「僕は二年生になって花丸をもらった!」と家で喜んでいたそうだ。
25%ルールでほめると自己肯定感も高くなった。
【特徴】
・小学二年男子
・分からないことやできないことがあると、大声をあげて泣き、壁をドンドンと蹴ったり、本棚の上に乗って叫んだりする。
・パニックになると、物を投げたり鉛筆等で机をたたいたりする。
・「死んでやる!」と叫んで、ベランダに出ることもある。
・友達とトラブルになると、素直に謝れず、怒ったり泣いたりする。
NG 対応 叱ってやめさせ、説教して教える
暴れているときに「やめなさい!」「静かにしなさい!」と言葉だけで制しようとしても、行動はエスカレートするばかりである。
また、挑発するような彼の言葉にのって、さらに大声で教師が怒鳴るのは、相手の思うつぼである。
さらに、興奮している子に「〇〇は、~~だからいけません」と教え込もうとしても、教師の言葉はなかなか彼に入っていかない。
効果のあった対応1 クールダウンする
廊下や別室へ連れていき、静かな場所でまず気持ちを落ち着かせる。
お尻を床について座らせる。
落ち着くまでにどれくらいの時間がかかるかを計っておくと、短い時間で落ち着けるようになってきたときにほめることができる。
効果のあった対応2 原因を取り除き、予防する
乱暴な行為をするには、必ず原因がある。
いつ、どのようなときに暴れるのかを観察して分析し、予防できるようにする。
算数で分からないことがあると暴れていたので、家で算数の予習をしてもらったところ、落ち着けるようになった。
効果のあった対応3 25%ルールでほめる
100%できていなくても、25%できたらほめる。
みんなと同じようにはできなくても、少しでも我慢ができたらほめる。
25%ルールを意識すると、ほめる回数が増えて、教師の気持ちも楽になる。
※この記事は2016年2月1日発行の『TOSS特別支援教育 第2号』に掲載されたものの再掲です。
一部、名称等が当時のものになっていることがありますこと、あらかじめご承知おきください。
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