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初・小学1年生担任として、子供に響いた! 声がけ・接し方③

『発達障害・グレーゾーンの子がグーンと伸びた声かけ・接し方大全』から学んだ、今年度担任する小学1年生の子供にやって良かった声かけ・接し方を紹介します。

宮城県公立小学校教諭  菊池 陽実

 『発達障害・グレーゾーンの子がグーンと伸びた声かけ・接し方大全』(小嶋悠紀著 講談社)から学び、小学1年生の「子供に響いた!」「超効果的だった!」と思った実践のご紹介、今回で最終回となります。少しでも皆様のお役に立てていただければ嬉しいです。

【声かけ・接し方 その3】他人事メソッドで語る

 1年生の子供たちが1日6時間ぐらい同じ部屋の中で暮らしていれば、小さなトラブルは避けることができません。
 今回は、2つのパターンで小さなトラブルの対応方法を紹介します。

(1)「先生、ドッジボールをしたいのに、太郎くんがボールを独り占めしてきます!」
 休み時間でのボール使用ができるようになり、ドッジボールをやることを、とても楽しみにしていた子供たちがいました。
 ドッジボールでのトラブルはよくあることだと思い、休み時間のたびに一緒に外へ行き、先生の審判のもと、ドッジボールをしました。
 「当たったのをすぐに認められて、えらいなあ」
 「ドンマイ! の声がけがいいね」
と、その場で価値付けしながら、楽しく遊びました。
 ある日、私が用事で休み時間に一緒に外へ行くことができず、子供たちだけでドッジボールをすることがありました。
 帰ってきた子供たちは、
「先生、ドッジボールをしたいのに、太郎くん(仮名)がボールを独り占めしてきます!」
「みんなでけんかになって、全然ドッジボールできなかった」
と、怒りながら教室へ入ってくるのです。
 3時間目の最初、授業を始める前に、子供たちに聞きました。
「ドッジボールが上手くいかなかったようだけれど、どうしてできなかったの?」
 ドッジボールに参加した子供たちから出た理由は、
「ボールの奪い合いをしていて、ドッジボールを始められなかった」
というものでした。
 そこで先生が、「そんなことなら、ドッジボールをしなければいいでしょ!」と叱っても、子供たちのためにはなりません。
 私は、ここでクラス全員に聞きました。
「ドッジボールを休み時間にやらないかもしれないみんなにも、知恵を貸してほしい。どうやったらドッジボールが上手くいくか考えてくれないかな」
 子供たちからは、
「思いやりをもって友達にゆずる」
「じゃんけんでボールを誰が持つかを決める」
などの意見が出ました。
 その後、私からドッジボールのやり方を、順を追って説明しました。
 休み時間の遊びに、全身全霊をかけて楽しみにしている子供は、きっと私の学級の子供たちだけではないはずです。
 休み時間の出来事も、「やり方を教えること、そして、できていたら褒めること」が大切であると考えています。

(2)「先生、次郎くんが『めがね野郎』って呼んできました」
 朝、登校すると、青葉さん(仮名)から、「昨日の帰り道で次郎くん(仮名)に会ったら、青葉さんのことを『めがね野郎』と言ってきて嫌だった」と申し出がありました。
 いつ、どこで、どんな状況での出来事だったのか、などを青葉さんに聞きました。そして、「それは嫌だったね」と共感し、次郎くんに話を聞くことにしました。
 次郎くんが登校した後、廊下にこっそり呼んで話を聞きました。
 しかし、「おれはやっていない。一緒に帰ったお兄ちゃんが言ったのかもしれない」と言い出しました。
 青葉さんも呼んで、3人で時系列に内容を確認しますが、次郎くんは認めません。
 お兄ちゃんが一緒にいたことは事実のようでしたが、お兄ちゃんがそのように言ったとは考えにくいように思いました。
 
 そこで使ったのが、小嶋悠紀氏が紹介する「他人事メソッド」でした。
「先生の前の学校での話なんだけどね。仲良しの友達にふざけて、『〇〇野郎』って言ってしまった人がいたんだよね。その子はね、学校嫌だなと思うぐらいすごく傷ついてしまったんだよね…。ふざけて言ったつもりでも、その子を傷つけたらだめだよね」
「次郎くんは『めがね野郎』って言ってないみたいだから、関係ない話だけどね」
「ちなみに、次郎くんは『〇〇野郎』って言われたら、どんな気持ち?」
次郎くん:「…嫌だ」
「そうだよね。じゃあ、今までもこれからも、次郎くんは青葉さんに『めがね野郎』って言わないことを約束できる?」
次郎くん:「うん」
「青葉さん、今、次郎くんは約束してくれたから、1回だけ信じてあげてほしいんだけど、いいかな」
青葉さん:「はい、分かりました!」
「ごめんね。言われて嫌だったよね。先生が代わりに謝るね」
「次郎くん、これからも『絶対にやらない』って信じているからね。よろしくね」
 
 これ以外にも、やってしまったことを素直に認められない子供に、何度も出会いました。
 しかし、「他人事メソッド」を使い、「あなたとは関係ないかもしれないけれど」と言った上で、「トラブルが最終的にどうなってしまうのか」を言語化し、イメージさせることが、これからのトラブルを避けられる1つの対策になるように感じました。
 
 小嶋悠紀先生の著書『発達障害・グレーゾーンの子がグーンと伸びた声かけ・接し方大全(講談社)』からの学びを学級で生かしてきた1年間。
 これからも「どの子も成長する!」と信じてあげられる先生になるために、より良い「声かけ・接し方」を実践していきたいと思います。

(了)


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