<そうだったのか! 発達障害児への本当の対応>ADHD症状への具体的対応ライブ中継!③
(②つづき)
さて、子供が不注意状態になったら、チェックしてもらいたいことがあります。
1つ目は、話が長くないかをチェックしてください。話が長いと、絶対に不注意状態になります。なぜならば、ワーキングメモリーが1個だから、情報処理能力を超えてしまいます。
情報処理能力を超えてしまうので、これ以上入れられないというサインを出すんですね。
「僕の脳にそれは入らない」という心の叫びなんです。そう思って子供の不注意状態を見てください。
彼らにとって不注意状態になることは必要な場合もあります。
必要な時間というわけです。それ以上やってしまうと、とてもではないけど無理なので、あえて注意を飛ばしてストレス度を軽くするということです。
2つ目は、複数のことを伝えていないかチェックしてください。たくさんのことが入ると脳は一気に不注意状態になります。
3つ目は、わかりにくく伝えていないかチェックしてください。
曖昧に書かせてもらいましたが、子供によってわかりやすさが一人一人ちがいます。
大人はその子にとってわかりやすく説明しているつもりでも、わかりにくいときがあるということはよく起こります。
家庭でも同じですよ。伝わらないときはたくさん伝えてしまっています。
不注意状態への対応をお伝えします。
1つ目は「緩やかに注意を戻す」です。
「あっ、見てね」という感じでいいんです。気付かせてあげればいいんです。「いま先生話してるよね」というように嫌味にならない言い方で戻してあげてください。「いまから話すよ」「○○くん」「先生話すよー」と、注意を促していく。
2つ目は、「目立たないように戻す」です。集団の中では、特に目立たないように戻してあげる。
今、多くの先生から、どうやって戻せばいいか相談を受けています。
目立たないように戻すことがとても大切ですねって話をするんです。
不注意状態になったとき、多くの先生はこう言いませんか?「○○くん」「○○くん、話すよ」「○○くん、見ていないよ」としつこく言ってしまうじゃないですか。これ、否定的な戻し方なんです。しつこさは自尊感情を落とします。
先生が言っていることを、周りの定型の子たちがインプットします。心優しい口うるさいおせっかいな子供になります。その子に対して、「また先生に注意されるよ」とか「話聞いて」と言ってしまいます。善意のある悪と呼んでいます。
善意ほど恐ろしいものはない。善意があって戻してくれているのに、その子は何て言いますか?「もうやめてよ」って言えないじゃないですか。
そうならないようにどうするかということで、肯定的に意識を戻す方法を先生方にお伝えしています。
例えば、こちらを見ていないとします。
「はい、みんな先生の話を上手に聞いている。○○くん見ているね」と言ってあげる。
すると、見ていなかったとしてもこっちを見るでしょ。ほめてしまえばいいんです。ほめてこちらに注意を促してしまえばいい。ただ連発するとばれてしまうから、要所要所で使うんです。
例えば、間接的に戻す方法もあります。隣の子をほめるのです。「見ているね」と言って、隣の子も見てあげる。こうやって間接的に戻していくという方法も考えられます。
次、注意の対象を示すことも大切です。ワーキングメモリー上から消えてわからなくなってしまうんです。「今やっているのは、この部分だよ」と黒板を指さしてあげることも大切です。
これらがADHD対応の基本原則の2つ目、「人的環境調整」です。主体的に関わっている大人を変えろということです。周りの雰囲気とか学級の構造的なものとか目に見えているものとか全部が環境なんです。人も環境なんです。
小嶋悠紀
大学時代より発達障害の青年たちの余暇支援活動団体を立ち上げ発達支援に関わる。卒業後、特別支援を要する子供たちへの支援を中心に講演活動を行う。長野県養護教諭研究協議会において、県内の幼・小・中・高・特の1000名の養護教諭に講演を行う。
NPO法人長野教師力向上NETでも発達支援者育成部門を担当。
※この記事は2015年10月1日発行の『TOSS特別支援教育 創刊号』に掲載されたものの再掲です。
一部、名称等が当時のものになっていることがありますこと、あらかじめご承知おきください。
※この記事へのお問合せはTOSSオリジナル教材HPまで。
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