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その子の「こだわり」を「認め」「好き」になる!

「こだわり」がある子に信頼されるにはどうしたらよいか。真逆を考えてみる。信頼を失うには、その「こだわり」を全否定すればよい。信頼を得るには、その子の「こだわり」「好き」を教師(支援者)が「好き」になればよい。

千葉県公立小学校教諭 並木友寛



「先生、UMA(未確認生物)の中で何が一番好きですか?」
小学3年生のAくんのその日の会話は、このように始まります。朝、教室の教卓で私がパソコン作業をしていると話しかけてくるのです。
「う〜ん、やっぱり雪男かな?」
「あ〜、雪男ね。おれはねやっぱりインカニヤンバかな」
「へえ〜。インカニヤンバってどんなの? ちょっとやってみて」
Aくんは、ランドセルを背負ったまま、体をくねくねさせ始めます。
「まだおはようも言っていないのに、何やってるんだろうな、この子は」と心の中でツッコミを入れつつ、Aくんの姿を見ているのが何とも楽しいのです。ちなみにインカニヤンバとは肉食の超巨大ウナギらしいです。この光景からも分かる通り、Aくんは生き物、特に空想上のものや過去に存在したものに大変詳しく、こだわりがあります。給食中もそのような話をして、班の友達の‟ポカン?”をつくり出しています。

Aくんのこだわりは授業中にも垣間見えます。例えば漢字練習。『あかねこ漢字スキル』(光村教育図書)を使って、机に指書きからスタートするのが通常ですが、Aくんは違います。オンライン学習ツール「あかねこ漢字スキルコネクト」で指書きをするのです。隣の真面目な女の子に「机に指書きするんでしょ」と言われていますが、そんな時には私が「これ(コネクト)やったら、Aくんはやるらしいよ」と間を取りもっています。その方法で、彼は漢字テストで100点を取るのです。「自分にはこれが合っている」と分かっているらしいのです。
それでもAくんは自分がやりたくない学習や自分のやり方にそぐわない場合には「え、なんで?」「めんどくさ〜い」などと発言します。そんなAくんが、私にはかわいくてしかたありません。

上の画像は彼の日記です。毎日こんな感じなのです。この日記からも彼の「こだわり」がいくつか見てとれます。ゲーム、特にMinecraftが大好きなのです。マイクラ(Minecraftの略)の話をしだすと、もう止まりません。私はマイクラをやったことがありません。だから彼に「教えてもらう」のです。「どんなキャラがいるの?」「何が好きなの?」質問に答えるだけで、ニコニコしてきます。

ここまでで私がしている特別なことは一切ありませんが、意識していることはこれです。

その子の「こだわり」を否定しない

否定した瞬間、「先生はぼくのこと分かってくれない」となってしまいます。目的は、「Aくんが楽しく学校に来て、学ぶ」ことです。これが中心にあるから対応がブレません。Aくんは3年生になって初めて学級委員になりました。Aくんの保護者に、「先生、来年も担任をお願いします」と嬉しい言葉をいただきました。


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