<ミニ特集>あの子の学習の苦手さに対応する合理的配慮【巻頭論文】
アセスメントから合理的配慮へ
教師の独りよがりの支援から脱却しよう。
長野県公立小学校教諭 小嶋悠紀
「学習の苦手な子供に効果的な教材や教え方はありますか」というQをいただくことがある。このような時に私は、「これについてはお答えができません。1人1人の状態像が違うからです」とお答えしている。
「学習の苦手さ」というのは、意外に大きなテーマである。
例えば書字を例に取ろう。
「インプット回路に困難はありますか?」「インプット回路のうち、視覚や眼球運動に課題がありますか? それとも視知覚情報の統合に課題がありそうですか?」
「アウトプットに課題がありますか?」
「それは微細運動ですか? それとも粗大運動に課題がありそうですか?」
「覚えているのに書けないというようなアウトプットの統合的な問題はありませんか?」
「自閉症傾向があり過敏性はありませんか?」というように、書字1つとっても様々な原因が考えられる。
これに「読む」「見る」「数学的な処理」「文章理解」「WM」などの課題を複合的に絡ませると、さらに課題は複雑になる。学習の困難性は、それらの組み合わせが1人1人違う。これらを的確にアセスメントするからこそ、的確な「合理的配慮」が提供できるようになる。
また合理的配慮もアセスメントの結果から、1人1人提供されるものが変わるはずだ。1人1人の学習の苦手さに寄り添っていくこととは、そのような過程を丁寧に経ていくことである。
これらの事例に似たような事例はそれぞれの教室であるはずだ。
そのような場合、まずはアセスメントをしてから、似ている事例を真似して支援をしていただくことをお勧めする。
その上で答えは「子供の姿」が教えてくれることだろう。
うまくいった場合はブラッシュアップする。うまくいかなかった場合はぜひ修正をあきらめずかけ続けて欲しい。
●小嶋悠紀プロフィール●
本誌編集長・小学校教諭
大学当時より発達障害の青年たちの余暇支援活動団体を立ち上げ発達支援に関わる。卒業後、特別支援を要する子供たちへの支援を中心に講演活動を行う。長野県養護教諭研究協議会において、全県の幼・小・中・高・特の1000名の養護教諭に特別支援の講演を行う。NPO法人長野教師力向上NETでも発達支援者育成部門を担当。
※特別支援教育について、より詳しい情報を知りたい方は『TOSS特別支援教育第23号』をご購読ください。<お申込み・お問合せ先>TOSSオリジナル教材HP https://www.tiotoss.jp/
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