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嫌なことはやらない! そんな子が自分から苦手に挑戦

①相手の好きを好きになる ②選択肢を示し、自己決定させる。

埼玉県公立中学校教諭 向島瑶子



「勉強が苦手で、嫌なことにぶつかるとかんしゃくを起こす」
そんな生徒がいる学級の国語の授業を担当しました。

例えば、彼は漢字を覚えることが苦手でした。
調子のよいときには学級の皆と一緒に授業の始めで取り組むことができますが、そうでないときには、顔を机に突っ伏して全く取り組みませんでした。

支援の必要な子だから仕方ないのかなあ。
でも、やりたいことしかやらせないのは、本当にこの子のためになるのかなあ。
と、正直対応に困っていました。

ただ、最初からできないと決めつけてしまうのはよくないと思い、様々なことを試しました。

まずは、相手の好きを好きになる

彼は、ガンダムが大好きでした。
それを知った私は、授業前の休み時間に毎時間少し早く教室へ行き、彼とガンダムトークをしました。
彼は、歴代のガンダムを教えてくれたり、Googleで画像を見せてくれたりと、楽しそうに私に語ってくれました。

その直後の授業は、机に突っ伏さずに漢字の学習に取り組むことができました。

しかし、毎回うまくいく訳ではありませんでした。

「えー、また漢字ー?」
と、机に突っ伏しそうになります。

姿勢が崩れるとそこから起き上がるのに時間がかかるため、すかさずこう言いました。
「漢字今やる? それとも後でやる?」

選択肢を示し、自己決定させたのです。

すると、「今やる」とつぶやき、ゆっくりと取り掛かり始めました。

この時の対応にも、正直迷いがありました。
「やらない」と言われたらどうしよう。
本当に選択肢を与えてしまってよいのだろうか。

しかし、結果として彼は「今やる」という選択ができました。
自己決定させたのがよかったということもありますが、振り返ってみると、これまでの関わりがあったのも大きいのだと考えます。

その子との関係性が変われば、教師の言葉の入り方も変わるのです。

①相手の好きを好きになる
②選択肢を示し、自己決定させる

これらの対応は、TOSS副代表・長谷川博之氏からの学びです。

実際に学んだことを実践してみるときに、その子を成長させたいと真剣に考えている自分に気付きました。
「本当にこの指導でよいのか」と悩むときも、本気でその子のためになっているのかを考えるからこそ悩んでいるのです。

私は彼を指導することで、子供一人ひとりを大切に想うメンタリティを学び、成長できました。

自分が苦手だと思っていたことを、自分で乗り越えられた彼にも、自分の成長を実感させてあげたいです。


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