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小嶋悠紀の特別支援教育コンパス第51回 【あらためてADHDとASDの教育現場における課題を考える⑥〜ASDの子供たちが起こす課題〜】

 大好評の編集長日記「小嶋悠紀の特別支援教育コンパス」は、毎月第1、3木曜日に更新されます。
 特別支援教育の第一人者である小嶋編集長の貴重な知見が惜しみなく盛り込まれた、読みやすいのにDEEPな知識まで得られる連載です!
 この連載はメンバーシップ限定記事ですが、第1木曜日はどなたでもお読みいただけます。


(前号の続きである)

6 独特の正義感

 ASD(自閉スペクトラム症)の子たちの中には、自分なりの「正義感」を有している子供も多い。特に「ルールや約束」についてこだわるタイプの子供たちはさまざまなトラブルを起こしやすい。
 自分自身はルールやトラブルなどをなかなか守れないにも関わらず、「相手がルールや約束を守れないことが許せず」に過剰に怒るといったトラブルが絶えない。
 また、自分に暴力的な行動があっても、相手が友達に手を出したことに過剰に怒りを表出させ「制裁する」と正義感を振りかざすことがある。

7 過剰な一貫性の要求

 彼らは、一貫性を求める傾向が非常に強い。「同じであってほしい」「ぶれないでほしい」という強迫概念にも似た思いをもつ子も多い。たとえば、同じスケジュールで動くことや、大人が言っている「約束」は絶対にぶれないでほしいという強い思いから、行動が難しくなったり反発を招いたりしている。急な変更や予定外の出来事が起こると、彼らはパニックになったり、強い不安感を抱くことがよくある。また、視覚情報入力も強いので、ちょっとした風景や環境の違いなどにも気づいてしまい、一貫性が失われることで不安定になりやすい。

8 ファンタジーなどの独特な空想世界

 独自の空想の世界に入り込み、現実との区別がつかなくなることがある。この「ファンタジー世界」への没入は、彼らにとって非常に魅力的な逃避先であり、混乱する現実世界にいるよりも、ファンタジーに没入していた方が楽な場合が多い。また現実とファンタジーを交互に行き来している子も多いので、なかなかこちらの指示や課題を受け取ってくれないこともある。もちろん、こちらの現実世界にファンタジーを持ち込む場合もある。

9 はがれにくいこだわり

 何か特定の物事に対して、非常に強いこだわりをもつことが多い。この「こだわり」は、時には学習だけでなく、日常生活において大きな課題になることもある。彼らは特定のパターンや行動を繰り返し、それを崩されることに対して強い抵抗を示す。また、こだわりは様々な部分で発揮されてしまう。「一貫性へのこだわり」「ファンタジーへのこだわり」「独特な正義感へのこだわり」「自分なりのやり方へのこだわり」「自分の興味のあることを優先するこだわり」など、これまでの特性に「➕こだわり」が発揮されることで、より特性が強く見えることがとても多くある。

10 言語性の高さから来る交渉の巧妙さ

 言語的なスキルが高い子供も多いのがASDの子の特徴ではないだろうか。言葉が巧みなので大人が彼らの理屈に負けてしまう場面もよく見る。
 特に自分のこだわりや、自分に有利なルールに持ち込もうとする時の交渉術はかなり巧みである。自分の要求や意見を通すために巧妙な交渉をすることが得意な子の場合は、友達に対しても同じことをしてしまいトラブルになりやすい。
 
前号と今号で、具体的に10個、学校現場におけるASDの子の症状を挙げてみた。この10個を学校でシェアするだけで、ASDへの理解は進むとは思う。次号以降、これらの対応について具体的な方法を紹介していきたい。


●小嶋悠紀プロフィール●
本誌編集長・元小学校教諭
(株)RIDGE SPECIAL EDUCATION WORKS 代表取締役
大学当時より発達障害の青年たちの余暇支援活動団体を立ち上げ発達支援に関わる。卒業後、特別支援を要する子供たちへの支援を中心に講演活動を行う。長野県養護教諭研究協議会において、全県の幼・小・中・高・特の1000名の養護教諭に特別支援の講演を行う。NPO法人長野教師力向上NETでも発達支援者育成部門を担当。


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