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「先生は知らないことを何も教えてくれない!」Aくんの我慢の緒が切れた!

暴言や不登校を引き起こした失敗からの教訓「子供をよく見て、よく話を聞く」

兵庫県公立小学校教諭 溝端久輝子



教師になって2年目、4年生担任の時の話です。
クラスにAくんがいました。Aくんは3年生の3学期に転校してきた児童でした。前担任から、Aくんについて、「転校してきたばかりで、3年時は特に何もなかったけれど、前の学校からAくんは要注意だと聞いていた」と言われました。前担任はAくんについてメモをしたノートを作っていました。「参考になるかもしれないので、先生に預けます」と言われて、そのノートと共に引き継ぎました。

勉強に困難を抱えるお子さんであることは担任してすぐに分かりましたが、素直で特に気になることもなく、4・5月を過ごしました。前担任がノートを作っていましたが、私はそのノートに一行も書き足すこともなく、開くことすらなく過ごしていました。ところが6月ごろ、ある日突然、Aくんが「ぼくは3年で転校してきたら知らないことがあるのに、先生は全然教えてくれなかった」と言い出したのです。素直と思っていたのは間違いで、Aくんは言いたいことも言わずに我慢していたのです。それ以降、Aくんに何を言っても、「先生は聞いてくれなかった」と言い、反抗的な言葉が返ってくるようになりました。

今、振り返れば、Aくんは、勉強についていくのもやっとで、通常学級ではとてもつらかったと思います。4年生で新しい環境になりましたが、担任は何も声をかけてくれない、できて当たり前だと思っていると映っていたのでしょう。それ以降、Aくんの暴言は増えていき、私との関係は悪化していきました。そして、とうとう2学期後半は学校を休みがちになってしまいました。
学年主任や管理職にも入ってもらい、何度も家庭訪問し、本人や保護者の話を聞くことを徹底しました。Aくんとたわいもないことを話したり、いっしょに遊んだりするようにしました。担任の思いを伝えるより、Aくんが言ったことを一旦受け入れ、「そう思ってるのか」と否定しないようにしました。3学期は少しずつ学校に来るようになりましたが、関係が完全に良くなることはありませんでした。

前担任がノートを作って引き継いだにも関わらず、気にしていなかったのは、私自身の余裕のなさであり、未熟であったと言わざるを得ません。Aくんは我慢に我慢を重ねて、暴言という態度に出たのでした。暴言を吐いたり不登校になったりしては、回復させるまでに何倍もの時間がかかり、第一に本人が傷ついてしまいます。

今一度、子供を観察し、「何かこまっていることない?」と、本人の話をよく聞きましょう。さらに、一人一人に目を向けることです。ずっといっしょにいるクラスの児童の「あれ?」という感覚は正しいでしょう。わずかな変化も見逃さないでいたいです。


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