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<“あの子も変わった”教室での実践記~通常学級編~>認められる場面をつくる

認められる場面を重ねていくことで向上心が生まれてくる。

島根県公立小学校教諭 小室 由希江

一 四月の姿・1年後の姿

A児は、学校を飛び出したり、大ゲンカをしたり、「問題児」と言われていた子だった。
私が担任するまでほとんど学習に参加したことがなく、ノートを書けなかった。「おれ、バカだから」とポツンと言った一言が忘れられない。

ところが、A児は変わった。運動会で団長を務めた。委員会では委員長を務めた。
前年度に交流していた地域の方との交流を個人的に続け、地域の方から校長に感謝の手紙が届いた。
学習では、平均点を超える点数が取れるようになった。討論では、少数派でも堂々と主張した。
そんなふうにA児が変わったのは、自己肯定感を持つことができたことが大きい。

二 認められる場面をつくる

変われたのは、向山型の指導法で認められることが増えたからだろう。
子供がほめられたと思える、認められたと思える、そんな場面をつくることができるのが向山型である。
授業の中でも生活の中でも肯定される場面をつくっていく必要がある。

例えば、学習では次のようなことがあった。
国語の教科書から、4行を読ませ、個別評定をした。勉強ができる子たちにもC評定を付けた。
Cの評定の子供たちは不思議そうな顔をしていた。勉強の苦手な、つっかえて読んだ子でさえB評定を付けていたからだ。

「なぜCだったか分かる?」の質問に、A児だけが答えた。
「もしかして『、』で間がないから?」

それを聞いたみんなが、「おおー!」と声をあげた。

A児をほめ、再テストをした。

全員をきちっと修正させ、合格にしてほめた。
どの子も認められる授業の中で自己肯定感が育まれていく。

三 ちょっぴりガマンを教える

社会では、写真を見て、どんどん発表していく授業をした。何でも認められるのだから、やんちゃ君たちもバンバン発言した。

授業の途中、A児は写真を見て何かに気づいた様子を見せた。すぐに話そうとしたから、A児の方に耳を寄せて、内緒話のポーズをした。それに気づいたA児は、小声で教えてくれた。

「それ、今日のまとめにすごく大事だから、終わり頃に発表してね」と言うと、「分かった」と引き下がった。「でも、忘れそう」と言うので、ノート
に書き込んであげた。

いざ発表のときは、ノートをじっと見た後に発表できた。「大成功だよ! ありがとう!」とお礼を伝えた。
ちょっとのガマンの後には報酬が得られるようにしておかねばならない。

実はこの日は参観日だった。何度も何度も発表し、保護者にも良いところを見せることができた。

あまりの変化に、保護者から「いつもこうなんですか?」と、質問があった。「そうです。でも、もっと伸びますよ。しっかりほめておいてください」と答えると、保護者はとてもいい笑顔を見せた。


※この記事は2016年2月1日発行の『TOSS特別支援教育 第2号』に掲載されたものの再掲です。
一部、名称等が当時のものになっていることがありますこと、あらかじめご承知おきください。

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