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教師と保護者とで協調関係を築こう

教師と子供をつなぐパイプ役がお母さん。対立関係ではなく協調関係を目指すその一歩目は、目的と目標の共有だ。

宮城県公立中学校教諭 三浦裕司



小学校6年から不登校の中学1年生のA子を、今年度から担任しています。集団が苦手で、大勢がいる教室で過ごすことに不安を感じていました。行き渋りが始まった当初は「宿題が終わっていないから学校に行けない」「遅刻するくらいだったら1日休む」などの理由を訴えており、こだわりが強く完璧主義の性格であることが分かりました。彼女は現在、適応指導教室に週2〜3日のペースで通い、自分のペースで学習を進めています。彼女が安定して通うようになるまでの半年間で、私が繰り返し母親に伝えてきたことは以下の3点です。

① 登校がゴールではないという意識をもつ

不登校支援を始めるにあたり、教師と保護者が思いを共にするということが何より大切です。当初、A子の母は「なんとかして学校に行かせなければ」と躍起になっていました。「学校に行けない我が子はダメなんだ」「学校に我が子を通わせていない自分はダメなんだ」と自分を責める気持ちが少なからずありました。そういった負の感情を少しずつほぐしていくことを意識し、「登校がゴールではない」「登校はあくまでも手段である」ということを伝えました。

② ありのままの子供の姿を認める

その上で、目指すのは本人の幸せです。A子の母には「あなたが元気でいてくれさえすればいい」という気持ちで接してほしいと伝えました。笑って1日を終えることができたのなら、最高です。そういった構えでいればこそ、本人が勉強をやらずに好きなことをやっている状態だって受け入れられるようになります。逆に、ちょっとの時間でも勉強に取り組んだり、苦手なことに挑戦しようとしたりする様子を心から嬉しく思うようになるのです。

③ 本人が夢中になれるものを大切にする

A子は絵を描くことが好きで、将来はイラストレーターになりたいという夢があります。本人が夢中になれるものを大切にするという点で、A子の母と共通理解を図りました。なぜなら、本人にとって好きなこと、夢中になれることが心の支えになるからです。ましてやA子にとって絵を描くことは、将来の職業選択に関わるほど重要なことです。何か物が必要だという場合には可能な範囲で希望に応えてあげること、また成果が上がった時には心から喜び励ましてほしいということを伝えました。


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