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<ミニ特集>ICTと生成系AIと発達障害の子供⑤

ChatGPTを活用することで、苦手と向き合える子供がいる

宮城県高等学校教諭 阿部秀也

1 勉強への苦手意識が強いA男

 赴任当初、私に一番初めに声をかけてくれたのがA男だった。人懐っこい、笑顔が可愛らしい生徒なのだが、対応する人によって様相が全く変わる。自分にとって苦手、合わないと思った大人に対しては、挑発的な言動・行動が止まらない。勉強、特に、文章を書くことに抵抗感を示し、「俺にはどうせ無理」と突っ伏してしまう。そんな彼にChatGPTを活用した支援を展開することにした。

2 AIを活用した支援と子供の事実

 A男の中で特に苦手意識が強いのが、感想文や自己紹介文などの、自分のことを書く課題であった。また、文章で自分の考えを書く際にも強い拒絶反応が出た。
 そこで、文章を書く前にChatGPTに情報を入力させた。わずかな情報から文面が生成される。この文面をもとに文章を考えてみるように促してみると、元の文面があるからか、積極的に課題に取り組むようになった。取り組むようになった場面を褒め、書けた文章を評価していく中で、強い拒絶反応は表出しなくなり、前向きに学習に取り組む姿が増えてきた。


AIの存在が安心感につながる。


 まずは、私が担当する理科の授業や、学年で行う総合的な探究の時間の中での活用を進めていき、他教科でも彼に関してはChatGPTの活用を認めてもらえるように促していった。
 現在、突っ伏すA男の姿はなくなり、学習に取り組む姿が見られるようになった。

3 活用推進の際の注意点

 使い方を工夫することで、支援を要する子供への有効な対応になりうるAIだが、学校に導入する際には注意点がある。


活用の目的を明確にする。


 なぜAIの活用が有効なのか、その意図は何かを明確にして、職員に周知し、活用を認めるように働きかけることが重要だ。学校全体で共通の認識をもってAIを活用していくことで、AIが子供にとっての強力なサポーターになるのである。


<A男について>
・高校2年生男子。注意欠如・多動症の診断あり。
・高校1年生までインチュニブの服用をしていた。
・衝動性が強く、人によっては反抗的な態度が見られる。
・勉強に苦手さがあり、特に文章を書くことを極端に嫌がる。
・「 何を書けばいいか分からない」、「俺の書く文章なんてダメな文章だ」と話し、強い苦手意識があることを意思表示している。


■対応方法  ChatGPT を活用した支援を展開する
 文章を書く場面になったら、ChatGPT に課題と簡単な情報を入力し、例文を作成してもらうようにした。初めはさまざまに入力して使い方を覚えさせ、その上で、例文を参考にして自分の文章をつくってもいいことを伝えた。すると、それまでできなかった活動にも前向きに取り組むようになっていった。


■ポイント  いつでも分からないことを教えてくれる相棒ができたと考える
 初め、ChatGPT を使うことにA男自身も抵抗を示す面があったが、「いつでも先生がついて教えられるわけではないから、質問をいつでもできる先生代わりにして使えばいいんだよ」と、活用することの意義を明確に伝えた。
 また、教員側に対しても、教師がいつでも対応できるわけではないので、その部分を補ってくれるツールとしてのAI の役割と活用方法を提示し、彼がAI を使うことを受け入れてもらえるように促した。
 結果、AI を使ってさまざまな学習活動に取り組めるようになった。


■注意事項  教職員に対応の共通理解をもつ
 教員全体にAI を活用することの意義、有効性を説明する。また、研修や実際に使っている様子を共有し、活用してもらえるようにしていく必要がある。そのような「可能な限りAI を活用できる環境」を整える必要がある。


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