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小嶋悠紀の特別支援教育コンパス第47回 【あらためてADHDとASDの教育現場における課題を考える③〜ADHD症状の不注意とそれ以外の不注意を見極める〜】

 大好評の編集長日記「小嶋悠紀の特別支援教育コンパス」は、毎月第1、3木曜日に更新されます。
 特別支援教育の第一人者である小嶋編集長の貴重な知見が惜しみなく盛り込まれた、読みやすいのにDEEPな知識まで得られる連載です!
 この連載はメンバーシップ限定記事ですが、第1木曜日はどなたでもお読みいただけます。


 ADHDの症状の3大症状「多動・不注意・衝動性」の中でも、大人になっても引き続き症状が大きく出てくるのが、「不注意・衝動性」であろう。
 その中でも「学習や活動に大きな影響を及ぼす」のが「不注意」であると考えている。
 しかし、「不注意」といっても状況は様々である。
 
 不注意と聞いて、どのような状態を思い浮かべるだろうか?
 「先生の話を集中して聞けず、聞き漏らしている」
 「集中すべき課題に集中できずにボーッとしてしまう」
 このような姿を主に想像するだろう。
 しかし、これらの2つの状態は、同じ不注意状態に見えるが全く違うのである。
 特に「ADHD症状からくる不注意」と「それ以外(自閉症状など)が原因で起こる不注意」をしっかりと区別できなければならない。
 
 まず、「集中すべき課題に集中せずボーッとしている」という状況をよく観察してもらいたい。
 よくありがちのなのは、
「自分のファンタジーの世界に入り込んでいて不注意状態になっている」
というものだ。これは「自閉症状」が原因で起こっている。
 また、
自分のやりたいことを優先してしまい、それをやることによって不注意状態になっている
これも「こだわりが発揮されて」不注意状態になっているので「自閉症状」が原因である。
 であるから、これらに対しては「自閉症」への対応がそもそも必要になってくる。
 
 では、ADHD症状による「不注意」はどのような状態をさすのであろうか?
 それは、「ワーキングメモリの課題」による「不注意状態」である。
 「短期記憶が小さいので、聞き漏らしが多い」
 「今やるべき事を何回も質問してくる」
 「周りをキョロキョロして、何をすればよいかをうかがっている」
 「短い時間に、注意を様々なところに移し続ける」
 などがワーキングメモリの弱さからくる不注意症状といってよいだろう。
 これらへの対応は以下のようになる。
 
1 重要な情報発信がある人の近くに座席を置く
 まずは、不注意を最小限にするための「環境調整」から始めるのが大切だ。先生の近くに置く事で、受け取って欲しい刺激が入りやすくなる。

2 刺激に左右されない環境を用意する
 廊下や窓側より、教室の真ん中の列の最前列が良い場合が多い。目に入ってくる刺激を制御する事で不注意を抑制できる。

3 何回も優しく伝える
 不注意状態はワーキングメモリの弱さから来ているので、同じ事であっても、何回もやさしく伝えて欲しい。「何回言っても分からない」ではなく「何回も伝えるから分かってくる」と思っておくことが大切だ。

4 不注意じゃない時に褒める
 この子たちは、不注意状態を人生において何回も指摘されてしまっている。注意を大量に受けてきている。だから、大切なのは「不注意じゃない時を放置しない(見逃さずに褒める)」ことだ。
 「不注意状態でない時を子供の意識上に上げる」ことが大切なのだ。
 褒めることによって、不注意を抑制することが可能になる。


●小嶋悠紀プロフィール●
本誌編集長・元小学校教諭
(株)RIDGE SPECIAL EDUCATION WORKS 代表
大学当時より発達障害の青年たちの余暇支援活動団体を立ち上げ発達支援に関わる。卒業後、特別支援を要する子供たちへの支援を中心に講演活動を行う。長野県養護教諭研究協議会において、全県の幼・小・中・高・特の1000名の養護教諭に特別支援の講演を行う。NPO法人長野教師力向上NETでも発達支援者育成部門を担当。


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