特別支援教育・悩みが消えるQA② 登校意欲が乏しい中学一年生男子に対する方針
(回答者:長谷川博之)
Q 自閉スペクトラム症の中学三年生男子への進路指導は?
中学校一年生男子。自閉・情緒学級在籍。診断なし、薬の服用もなし。父・母・祖母・姉3人・本人の7人家族です。
入学式とその翌日、6月の体育祭には登校しましたが、その他は1日も登校できていません。はっきりとした原因はつかめていませんが、登校意欲が乏しく、保護者にも困り感がありません。
小学校六年生のときも、学期に1〜2日しか登校できなかったようです。学年主任として週1回家庭訪問を行い、陸上・マンガ・アニメなど、興味のある話をしています。休日の友達との関わりはあります。
私としては家庭訪問を頻繁に行い、登校刺激を与えたいのですが、支援級の方針として、家庭訪問以外は静観することになっています。今後、学年としてどのような方針を立てればよいでしょうか。
A 職員間で議論し方向性を定めます
課題を整理します。
1 小学校六年生時、学期に1、2日のみ登校
2 中学入学後、3日間のみ登校
3 原因不明
4 登校意欲に乏しい
5 本人が登校しないことに対し、保護者も困っていない
6 在籍する支援学級の方針として、家庭訪問以外は静観の構え
次に、具体的な対応策を考えます。
一 小学校五年生までの情報を詳細に聞き取り、原因ときっかけを整理する
二 中学に登校したその日に何を得て帰ったのか、職員で明確化するとと
もに、本人の心情を言語化させる
三 一、二の結果を総合し、仮説を立てる
四 自閉・情緒学級のカリキュラムが当該生徒のニーズに即応しているのか
否かを分析的に検討する
五 以下の話題について話し合う
① 家庭における学力補充策
② 手伝い等職業訓練的習慣形成
③ 自閉・情緒学級のカリキュラムのカスタマイズ
④ 個別の教育計画及び指導計画
⑤ とりわけ年間ゴールと短期目標の設定
⑥ 卒業後の進路選択
六 以下の項目について職員間で議論し、方向性を定める
① 一学年主任、支援学級主任のどちらが主導権を有するのか
② 教育計画、指導計画の確認と実施
③ 保護者、本人の思いの共有
●長谷川博之プロフィール●
本誌副編集長・中学校教諭
TOSS副代表。NPO法人埼玉教育技術研究所代表理事。日本教育技術学会理事、事務局長。JP郵便教育推進委員。埼玉県公立中学校教諭。
全国各地で開催されるセミナーや学会をはじめ、年間80以上の講演や授業を行っている。主な著書に『生徒に「私はできる!」と思わせる超・積極的
指導法』(学芸みらい社)等がある。
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