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小嶋悠紀の特別支援教育コンパス第55回 【あらためてADHDとASDの教育現場における課題を考える⑨〜ASDの子供たちが起こす課題への対応(4)〜】

 大好評の編集長日記「小嶋悠紀の特別支援教育コンパス」は、毎月第1、3木曜日に更新されます。
 特別支援教育の第一人者である小嶋編集長の貴重な知見が惜しみなく盛り込まれた、読みやすいのにDEEPな知識まで得られる連載です!
 この連載はメンバーシップ限定記事ですが、第1木曜日はどなたでもお読みいただけます。


4 気づかれにくい鈍麻性

 ASD(自閉スペクトラム症)の子供たちの多くが「過敏性」を抱えているということは、その逆となる「鈍麻性」も抱えていると考えていた方がよい。
 「過敏性」に隠れて、「鈍麻性」を併せ持っているASDの子供たちは非常に多い。
 例えば次のような事例である。
 「他の人の発する音には敏感で、うるさく感じているのに、『うるさい!』と切れて注意する自分の大声が一番うるさい」
 「人に見られることが苦手で体育館の集会に行きたがらないのに、その体育館で走りまくってしまう」
などである。
 多くのASDの子供を見てきて、このような「過敏性」と「鈍麻性」を併せ持つ子供が一番苦しそうだったというのが私の感想である。
 そもそもこの「鈍麻性」というのは、大人からかなり気づかれにくい。それでは、どのようなチェックポイントと対応があるのだろうか?

【チェック1】「鈍感なところ」から「鈍麻性」を探る

 我々が「鈍感だな」と思っている箇所には、「鈍麻性」が影響していることがほとんどだ。
「服が少し飛び出している」
「時間を忘れるほど没頭してしまっている」
「自分が動いてしまっていることに気づかない」
「相手に無神経な言葉を投げかけている」
などである。
 「鈍感な部分は鈍麻によって怒っているのではないか?」と考えて探ることが、「鈍麻性」を発見する第一歩だ。

【チェック2】「過敏性」の場面では、裏返して「鈍麻性」がないかを考える

 「過敏性」の裏側は、「鈍麻性」につながっていることが多い。
 例えば、
「相手から触られることには敏感に嫌がるのに、自分から触る時は力加減ができない」
「人から見られる視線は気になるのに、自分からはジロジロと人を見てしまう」
などである。
 このような「過敏性」の反対側にある「鈍麻性」のある子たちには、陥りがちな状況がある。
 「自分はさんざん周りに文句を言うくせに、自分もやってるじゃん!」
ということである。

【対応1】気づかせる

 まずは「本人に気づかせる」ことである。「鈍麻性の多くは、本人が認知していない」という点が問題なのだ。
「やさしく気づかせる事」
 その上で、気づいて修正できたら、
「よく気づいて直せたよね」
としっかりと褒めることが、とにかく大切だ。

【対応2】感覚を育てていく

 感覚や体の鈍感さは、そもそも「その感覚や体の部位を意図的に使っていない」ことが根本的な原因になる。
「静かな環境で音を聞いてみる」
「自分の声を冷静に動画で見てみる」
「はみ出ている部分を自分で引っ張ってみる」
「1つ1つの体の部位を大きく動かす」
「細かい指を1つ1つ動かしてみる」
などの基礎的な感覚を育てていくことが、とても重要になってくる。


●小嶋悠紀プロフィール●
本誌編集長・元小学校教諭
(株)RIDGE SPECIAL EDUCATION WORKS 代表取締役
大学当時より発達障害の青年たちの余暇支援活動団体を立ち上げ発達支援に関わる。卒業後、特別支援を要する子供たちへの支援を中心に講演活動を行う。長野県養護教諭研究協議会において、全県の幼・小・中・高・特の1000名の養護教諭に特別支援の講演を行う。NPO法人長野教師力向上NETでも発達支援者育成部門を担当。


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