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<“あの子も変わった”教室での実践記~通常学級編~>「みんな楽しみにしているから、学校へいくねん」

笑顔のA子。万策尽きるまでやったのか? 知的障害のあるA子が教室で初めて見せた笑顔は、会社活動の時だった。

兵庫県公立小学校教諭 TOSS春風 溝端 達也

「私、アホやから」

それがA子の口癖だった。
知的障害のある四年女児。A子は、就学指導委員会では、「特別支援学級が相当」という判定であった。しかし、保護者の強い希望で通常学級へ配置になった。

「A子ちゃん、そんなことないよ。最初から全部できれば、教室で勉強する必要はないから。一緒に頑張ろう」

そう言って励ましていた。
学習では、他の子供たちとは一緒にできなくて、別室指導を繰り返していた。
 


A子の自己肯定感を高めてあげたい。

授業では、向山実践を次から次へと展開した。TOSS教材を使いながら、いろんなことに、次から次へと挑戦させた。

①五色百人一首 ②名句百選かるた ③ペーパーチャレラン ④ふれあい囲碁 ⑤チャレラン大会 ⑥クラスイベント ⑦全員遊び ⑧手遊び歌 ⑨けん玉 ⑩手品

しかし、どれもA子を満足させることができなかった。
勉強だけでなく、運動も苦手。不器用なので、何もする気が起きないA子だった。
 
「私、アホやから」
「A子ちゃん、大丈夫だよ。まだ慣れていないだけだよ。きっと、できるようになるよ」

私はそう励ましてあげるだけだった。

「A子に対して、何もしてあげてないじゃないか。それでもプロ教師か」

私も自分を責めるようになっていた。
 


谷和樹先生にそのことを相談した。かつて、谷先生が兵庫に在住していた頃だ。谷先生は、私の話を聞いてこう言った。
 
万策尽きるまでやりましたか。
 
「まだ、たった10か20くらいじゃあないか。きっと、A子ちゃんのいい面を引き出すものがあるはずだ」

私は再び、向山実践、TOSSの実践を試す日が続いた。
 


谷先生からお話を頂いて一週間後、ついにその時がきた。

A子がはまったもの、それは、会社(係)活動だった。
A子は、お団子屋さんを開いた。紙粘土で作ったお団子にマジックや絵具で色をつける。

A子のお店は大繁盛だった。

「A子ちゃん、○○作って」
「これ、かわいいね」

お客の友達にそう言われて、A子は、満面の笑みを浮かべていた。お母さんの話によると、四年生の最初の頃は、「学校に行きたくない」と言っていた。しかし、今は、「早く学校に行きたいなあ。みんながお団子屋さんを楽しみにしてくれんねん」と言っていたという。

「本当に、万策尽きるまで、やったか?」

A子から教えてもらった。


※この記事は2015年10月1日発行の『TOSS特別支援教育 創刊号』に掲載されたものの再掲です。
一部、名称等が当時のものになっていることがありますこと、あらかじめご承知おきください。

※この記事へのお問合せはTOSSオリジナル教材HPまで。
https://www.tiotoss.jp/


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